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【中日双语专栏】被災地報道は事実を無視した美談を拒まなければならない

2016年 5月 10日17:13 提供:東方ネット 編集者:範易成

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 作者:莫邦富


 熊本の地震は中国国民の心をも揺り動かし、SNSメディアが発達したいま、地震関連の報道は「排山倒海(山を押しのけ海を覆す)」という語で言い表すことができるほどの勢いである。4月21日、新浪微博(ミニブログ)にアップされた在日中国人メディア関係者による記事が私の目にとまった。そこでは豊富な写真も交えて次のように伝えている。

 「余震が続くなか、熊本の被災地から10万人近くが避難している。熊本県のイオンモールはいったん店を閉めた後で商品を補充し、よりたくさんの品をより安く販売している。たとえば、おにぎりは税込10円(もとは108円)、429円から537円で売られていたお弁当が現在は100円。一部108円だったパンが税込でたったの30円。一部半値で売られているものもある」。

 記事を書いた彼への信頼から、私はブログ内容を直ちに転載(リツイート)した。そして、それだけにとどまらず、日本の通信社の電子雑誌にもっているコラムでこのことを取り上げた。視点がユニークで、内容が事実であることを写真が裏付けており、信頼できる情報だと考えたからだ。

 だがその後、その情報の最初の発信者がメディア関係者ではない関西在住中国人であることを知り、私は内心どきりとして情報源に対するある種の不安を抱いた。  

 翌日になって本当のことが明らかになった。その関西在住者が事実関係を根本的に美化し、被災地域における虚構の美談にしてしまっていたのである。真相は次のとおりであった。

 その日、同じ地区で新規開店を予定していたイオンの別店舗が震災の影響で一時的に開店を取りやめたため、もともとその店に入るはずだった食品が最寄りのイオンモール熊本にまわったという。賞味期限内にはとても売り切ることができず、大量廃棄となるのを避けるためにやむなく特価での販売となったのである。

 イオン九州の広報担当者はメディアからの取材に対し、今回の件は一時的な措置で、今後そのような販売はしない、とはっきり答えている。また、値下げも20日午後の一時的なもので現在は行われておらず、被災者支援とは関係がないという。

 事の推移からみて、まずは、真実を追究する日本のメディア関係者の仕事にかけるプロ意識を称賛しなければならない。そして次に、渡りに船とばかりに事実の美化に乗ずることのなかったイオン九州広報担当者の誠実な態度も褒めたたえるべきだ。  

 ただし、先の事実を美化した虚構のニュースはすでに中国で広く拡散しており、感動した中国人読者は、今回のことは日本企業が地震後に商品価格を十分の一に下げた正義の行動だと思ってしまっている。さらにこのニュースは私のような者の手を経て、ふたたび逆輸入のかたちで日本のメディアに現れた。日本社会による被災者救助や支援活動に対し、私たちは事実をありのまま伝えなければならないが、また一人ひとりが事実の美化や事実に配慮しない美談を拒絶しなければならない。事実の裏付けのない美談はいかなるものであれ、SNSの発達したいま、読者を欺くことはできないのである。

(日本語訳:広江祥子)