ようこそ、中国上海!
エコで未来を共有

Home >> 新着 >> 専門家 >> 銭暁波

天まであがれ(二)

2016年 9月 12日16:47 編集者:兪静斐

  作者:銭暁波

 前回の続きである。

 超高層ビルがニョキニョキと立つようになり、中に設置してある展望台もそれに合わせてどんどん高くなっていく。

 ニュー上海のシンボルであるテレビタワー「東方明珠」の高さ263メートルの展望台からは、360度広がる上海の風景を鳥瞰することができ、1994年にできた当時は観光客を大いに驚かせたが、今や中国のもっとも高いビルである「上海センター」の展望台はなんと「東方明珠」より二倍以上高く、552メートルの119階に設置されている。

 「上海センター」に設置されている展望台直通のエレベーターは、上り秒速18メートルの世界一速いものである。地下2階から119階までなんと1分足らずの55秒で到達するという。2016年5月に、三菱電機が新しい技術を開発したことで、超高速エレベーターの上り速度が秒速20.5メートルに更新され、119階まで53秒と、以前より到達時間は2秒も短縮された。

 2秒という時間は、普段の生活では気に留めるものなどいなく、ほんの一瞬にすぎない。エレベーターの上り速度が55秒から53秒に変わったことも、乗客にとってさほど変化を感じるものではない。しかし、まったく実感のない2秒を縮ませるにも、技術開発者の長年の心血を注いだ努力を欠かすことはできないであろう。

 エレベーターに関する技術の開発はすでに奇想天外の境域にまで進んでいる。

 みなさんは、「宇宙エレベーター」の建設構想を聞いたことがあるだろうか。昔の童話やSF小説にしか出てこないような空想上の話は、今日ではより現実的になり、すでに開発の段階にまで到達している。

 東京のスカイツリーの建設などを手がけた日本の大手ゼネコン大林組は「2050年エレベーターで宇宙へ」という構想をまとめて発表したのは2012年であった。人や物資を宇宙へ大量に運ぶために現行方式のロケットに取って代わり、低コストでより経済的に運行できる宇宙エレベーターを建設する構想である。より具体的な計画をみると、海洋上に基部である発着場をつくり、地球の上空3.6万キロメートルのところにターミナル駅を設置、全長9.6万キロメートルのケーブルでつなぎ、いわゆる軌道エレベーターを建設するというものである。

 遥かなる天界はいつの時代でも夢とロマンが満ちている神秘的なところである。地球上の住民はこの未知なる世界にあこがれ、古代から道具を伝って天に上るさまざまな物語をつくった。たとえば、『旧約聖書』にある「バベルの塔」や「ヤコブの梯子」、そして童話の『ジャックと豆の木』、さらに芥川龍之介の名作『蜘蛛の糸』など。

 「宇宙エレベーター」の構想が実現すれば、広漠なる宇宙はいっそう近くなる。さまざまな科学的研究や宇宙開発はより低コストで行われ、さらに、宇宙への旅行も今より気軽に行けるようになるかもしれない。

 さあ、2050年まであと34年、夢が広がる近未来はすぐそこに。

 「では、三階、火星旅行ビジターセンターへ参ります」エレベーターガールの魅惑な声に誘われ、いざ宇宙へ。(了)