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楽々落語(一)

2016年 6月 14日10:14 提供:東方ネット 編集者:兪静斐

  作者:銭暁波

 日本テレビのご長寿番組「笑点」の新しい司会役をめぐって、最近、お茶の間でちょっとした話題になったようである。

 1966年5月15日に放送がはじまったこの番組は日本の伝統的な話芸である落語のスタイルをかたどったもので、言葉遊びを中心とした笑いの定番として、長い間、世間を楽しませてきた。司会者を含め、七人の出演者はみな師匠級の名落語家である。司会者が出すお題を、ほかの六人がそれぞれ機知に富むユーモアな表現で解いていき、ご名答が出れば座布団が与えられ、冴えない答えだったら座布団を回収するという形の繰り返しで、観客の爆笑を誘うのである。日曜日の夕方に放送されるこの番組は、時間は約30分と短めだが、五十年が経っても人気が衰えず、日本のテレビ放送史上の奇跡といっても過言ではない。

 ユーモアの感覚や、笑いのツボは文化によって微妙に異なっても、喋りで人を笑わせることは、おそらくどんな言語にもある表現の形式である。落語は、日本式の「トークショー」であって、中国の「単口相声」(一人漫才)もそれに近い形である。

 室町時代末期から安土桃山時代にかけて、大名に仕え、天下の世情などを面白く語ったり、伝えたりする「御伽衆」と呼ばれる人たちの話が落語の原型といわれている。話の最後に「落ち」(サゲ)がついていることから「落語」と呼ばれ、落ちには多種多様なパターンがあって、落語の面白さをつかさどる最も大事な部分である。

 周知のように、日本には能楽や歌舞伎などさまざまな伝統芸能があるが、落語はほかの芸能と違って、華麗な衣装や、大がかりの道具、または複雑な音曲など一切使わないのである。座布団に正座し、着物を身にまとった一人の落語家が扇子一本と手ぬぐい一枚だけ(上方落語は少々異なるようだが)で何役も演じ、語りのほかに手振りや身振りで観客を楽しませる形をとっている。この独特の演芸の形式は江戸時代から今日まで維持されてきた。

 伝統的な技芸であるために、落語も歌舞伎など梨園の世界と同様に、一人前のプロとして出世するまでには少なくとも十数年の修行を重ねていかなければならないのである。落語の世界には「見習い」「前座」「二つ目」「真打ち」の順序できびしい身分の等級があり、昇格するたびにプロの道が徐々に開かれるのである。最終段階の「真打ち」まで上がると、ようやく一人前の落語家として認められるようになり、弟子をとることが許され、師匠と呼ばれるようになる。

 落語を鑑賞するためにはもちろん高度な日本語力が欠かせないのである。そのほか、諧謔的な風刺やユーモアをこめた皮肉、そして微妙な「間」や大切な「落ち」などを理解するために素早い反応力も必要であろう。とりわけ古典落語を聞く場合、歴史や文化に関する知識もある程度備えていなければならない。なんといっても伝統のある「洒落」や「粋」の世界なので、最初は難しいと思うかもしれないが、中に入り込めばその楽しさも倍増するのではないかと思う。

 さて、小生は昔、大学の授業でも落語を学生たちに聞かせたが、果たしてみなさんは楽しめたかどうか。それについての話は、次回に報告しよう。