ようこそ、中国上海!
最新バージョン

Home >> 新着 >> 専門家 >> 竇心浩  >> 正文

中国は留学生受入れの大国になった?

2015年 9月 25日15:25 提供:東方ネット

上海外国語大学日本文化経済学院  竇心浩

  アメリカの教育学者フィリップ·アルトバック(1989年)が提起した「中心-周辺」理論によると、国際的な知識システム·高等教育システムは不均衡的なものであり、これらのシステムには、知識センターが存在し、知識がこうしたセンターから次第に周辺へと発信するという。世界的に見て、今日アメリカは最も豊富な学術資源を持っており、知識の創造と伝達において世界をリードしているため、国際的知識センターおよび高等教育の中心となっている。日本、フランス、ドイツ等の先進諸国は言葉や地理等の制限で、国際高等教育システムの地域的中心となっている。それ以外の発展途上国は主に知識センターの国々から知識を吸収しているため、国際高等教育システムの周辺に位置づけられている。

 中心から周辺への知識の流れはさまざまな形で行われるが、留学生の国際的な移動は最も重要なルートだ。2012年海外に渡航した中国人留学生の数が39.96万人に及び、中国は世界最大の留学生送り出し国とされている。こうした意味では、中国は明らかに国際高等教育システムの周辺に位置する知識生産の後進国だ。ところが、中国教育部が一昨年(2013年)に公表したデータによると、35万6499名の留学生が中国の746大学、研究所、その他の教育機関に在籍し、前年度より15.8%の増加を見せた。中国は既に、フランスを抜き、アメリカとイギリスに次ぐ世界三番目の留学生受入国になった。国際高等教育システムの周辺に位置する一発展途上国として、これほど多くの留学生を受け入れていることはアルトバックの理論に一致していない。今まで広く知られている「中心-周辺」理論は、おそらくグローバル化が進んでいる現在の国際留学市場に適切でなくなっただろう。

 ただ、留学生の数だけでなく、その中身に目をやると、中国の留学生受け入れには独自の事情が見られている。アメリカ、イギリス、日本などの先進国と比べ、中国の留学生教育のレベルがまだ低い。外国人留学生の多くは語学留学や異文化体験を目的とする留学生で、学歴取得を目的とする留学生は四割にすぎない。日本でのいわゆる「就学生」も中国で留学生として扱われている。近年、滞在時間が6ヶ月以下の短期留学生は特に高い増加率を見せ、既に留学生四人に一人ぐらいとなっている。一方、大学院教育を受けている留学生が3万人ぐらいで、留学生全体の一割しかいない。また、留学生の専攻においては、中国語をはじめとする文学専攻が多く、全体の六割を超えている。

 中国の大学に在籍している外国人留学生の実態をみると、アルトバックの「中心-周辺」理論の適切さが改めて確認できた。留学生数という量的な側面では、確かに中国が大量な外国人留学生を抱えているが、留学生の質が依然として国際高等教育システムの地域的中心たる日本などの先進諸国を大きく引き離されている。グローバル化が進んでいくにつれて、国境を越えた学生移動が目立ち、留学生の量だけで受入国の高等教育の発展水準を判断できなくなった。現在、国際高等教育システムの中心的な位置を獲得するには、奨学金の充実などより、高等教育と研究水準の質的向上が一層不可欠な要件ではないだろうか。

関連記事