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米ロ首脳会談はなぜ多方面から注目されるのか

2018年 7月 17日11:12 提供:新華網日本語

トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領は16日、フィンランドの首都ヘルシンキで首脳会談を行った。トランプ氏の米大統領就任後、米ロ首脳が公式会談を行ったのは今回が初めて。

両国がこれに先立ち発表した情報によると、会談は、両国関係、中東情勢、ウクライナ情勢、テロ対策など多くのテーマに及ぶ。アナリストは、1回の会談で両国の構造的な矛盾を解決することは難しいが、両国は象徴的な成果で外に向け緊張緩和のシグナルを発するとみられ、これは中東や欧州などの地域の地政学的構造に影響を残すだろうと分析する。

▽米ロ関係:緊張緩和のシグナル発する

今回の会談は、準備段階から最終的な日程決定までの時間が比較的短く、米国世論は広く、トランプ氏が国内の保守派の圧力に耐えプーチン氏と会談するのは、主に外交上の突破口を求め、個人の外交能力を示し、11月の中間選挙に向け勢いを付けるためだとみている。ロシアにとって言えば、正式な会談の実現はロ米関係を改善し、西側諸国による制裁から逃れる第一歩だ。米国戦略国際問題研究所(CSIS)の欧州アジア問題専門家であるヘザー・コンリー氏は、正式な会談が開かれることでプーチン氏がトランプ氏の「平等な対話者」とみなさせるだろうとの認識を示した。

米国とロシアには構造的な矛盾が存在し、両国には相互信頼が欠けており、両国間には多くの「解決しがたい問題」が存在している。専門家の分析によると、少なくとも米国国内から見れば、対ロ政策における深刻な対立という国内の政治の雰囲気が、依然として両国関係を巡る最大の障害になっていると指摘した。

また、両国には国際秩序の構築において根本的な不一致が存在している。ロシア高等経済学院欧州国際問題研究センターのスースロフ副主任は、現在、ロシアと米国はシステム上の対立関係にあり、米国は世界の覇権的地位を放棄する気はなく、ロシアは多極化した世界秩序の構築を主張し、この根本的な不一致が、両国のシリア問題やウクライナ問題での矛盾と対立を引き起こしているとの認識を示した。

一方で、両国の対立を背景に、今回の米ロ首脳会談は非常に強い象徴的意義を持ち、両国の関係改善のシグナルを出している。クレムリンの外交政策顧問であるセルゲイ・カラガノフ氏は、会談では、既存の戦略兵器に関する協定の延期または改正を含む一定の成果が得られ、両国関係は新たなプロセスに進むだろうと述べた。

 ▽中東問題:相互協力を強化

中東情勢、特にイランとシリア問題は、トランプ氏とプーチン氏の会談における一つの重点だ。専門家は、両国は中東問題においてそれぞれの需要と立場で対立があっても、会談で一定の成果を上げる望みがあり、中東地域の地政学的構造に新たな変化をもたらすかもしれないと分析する。

米国大西洋協議会のスティーブン・セスタノビッチ研究員は、シリア戦争が新たな段階に入るに伴い、トランプ氏はシリアに駐留する米軍の規模をできるだけ減らし、イランのシリア問題での役割を制限したいと考え、さらにイランとイスラエルが衝突する可能性を引き下げたいと考えているとの認識を示した。

カイロ大学のNourhanal-Sheikh政治学部教授によると、ロシアは米国に対しシリアの一部過激派組織に対する支援を減らすと打ち出す可能性があるという。米ロ首脳は会談で何かしらの共通認識に達する可能性があり、ロシアはシリアのイラン軍削減と引き換えに、米国のイランに対する制裁を緩和させるかもしれないと予測する。

スースロフ氏も、シリアとイラン問題は密接につながり、互いに制約しているとの認識を示した。トランプ氏がシリアのアサド政権の合法性を認め、アサド氏の統治を覆す努力を放棄し、さらにロシアが推進するシリア問題の政治的解決を支持する可能性があるとし、ロシアは見返りとして、シリアのイラン軍削減に同意する可能性があると語った。

  ▽欧州視点:「道具」化を懸念

欧州のロシアに対する心理は複雑で、エネルギーでロシアと協力する必要がある一方、警戒心も存在する。ウクライナ危機の発生後、欧州連合(EU)は自身の経済利益を損なうことを惜しまず、米国とともにロシアに対し厳しい制裁を科した。しかし、トランプ氏が大統領に就任して以降、ロシアとの関係改善のシグナルをしばしば発し、EUは警戒心を抱いた。

今回の米ロ首脳会談を前に、トランプ氏はベルギーの首都ブリュッセルで行われた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席し、軍事費問題で欧州諸国を再度批判した。トランプ氏はメディアの取材を受けた際、プーチン氏が求めれば、彼はバルト海諸国で行われるNATO加盟国を中心とした軍事演習を取りやめる可能性を排除しないと述べた。

トランプ氏のこの発言は欧州諸国の不安を一層高めた。一部の欧州諸国はトランプ氏が欧州の利益を顧みず、プーチン氏と何かしらの「取引」を行うかもしれず、NATO内部の団結を破壊し、NATOの欧州の安全保障における価値を弱めることになると心配している。ブリュッセルのシンクタンク「カーネギー・ヨーロッパ」のTomasValasek主任は、一部の欧州諸国はすでに、米国が駐留軍の削減など欧州での軍備配置を削減することを心配し始めており、これにより、欧州諸国が引き続き東欧地域で軍事演習を行い、情勢をより緊迫させる可能性があると述べた。

また、欧州各国のロシアとの関係における立場と歩調が一致しているわけではないことから、米ロ関係の新たな変化が欧州内部に新たな食い違いを生み出すかもしれない。

ベルギーのアントウェルペン大学のDavidCriekemans副教授は、欧州東部の一部の国は歴史的な要因からロシアに対して強い警戒心を持っており、別の一部の国は欧州自体の安全保障体制の構築を主張し、また別の欧州国家はモスクワとの対話を新たにスタートさせるよう努力、ロシアを重要な潜在的経済パートナーとみなしていると指摘。欧州はワシントンとモスクワの間で「パワーポリティクスのバランス」を探る必要があり、欧州が直面する大きな試練は、その内部に十分な団結力があるか否かだと語った。

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